20代OLの瀬戸際

風の前の塵に同じ

ショートケーキケーキは面白い少女漫画なのか

果たして「ショートケーキケーキ(森下suu)」は面白いのか!?

ショートケーキケーキ 1 (マーガレットコミックス)

ショートケーキケーキ 1 (マーガレットコミックス)

 

漫画を読むのが好きです。少女漫画もレディコミも少年漫画も青年漫画もそれぞれまあまあ読みます。

その中で最近気になっているのが上記の作品「ショートケーキケーキ」。マーガレット本誌で連載されており、既刊5巻&7/5発売のマーガレットでは表紙+センターカラーも務めている人気作です。なのだが、気になっているというのは必ずしも好意的意味合いではなく、むしろ読む度に疑問に思っている。何故この作品は人気なのかと。

というのも、個人的な意見になりますがこの作品、ストーリーの起伏が弱いというか主人公が思い人と淡々と両思いになって終了しそうな勢いなんですね。この辺、本来の通常の少女漫画の勝ち筋(人気が出る・盛り上がる)ストーリーとは何なのか、またショートケーキケーキ(以下、ケーキ)がそこからどう異なっていて何故盛り上がりに欠けていると感じるのか、等を考えていきたいと思います。予め断っておきますが、個人の主観が多々ある点ご了承ください。

 

少女漫画の勝ち筋パターン

そもそも、通常の「恋愛をメインとする少女漫画」にはどのような類型があるのでしょうか。

ガラスの仮面ちはやふるといった恋愛メインでないと考えられる少女漫画もまた数多く存在しますが、ケーキと同じカテゴリではないとし、予め除外しておきます。

過去読んだ数々の漫画の記憶をひっくり返すと、まずはおおよそ次の要素の組み合わせによる分類が可能です:片思い志向か?/両思い志向か? × 障害は有るか?/障害なしか?

f:id:se_togiwa:20170711234948j:plain

 

ちなみに、ここでいう「障害」は大から小まで以下のようなものを想定しています。

f:id:se_togiwa:20170713002622j:plain

下にいくほど小さい障害、というイメージです。(障害の種類は他にもあるかもしれません)

 

この2×2の組み合わせは読者体験が異なると考えられるため、この中でケーキと同じセグメントに属する少女漫画の勝ち筋パターンと比較する必要があります。ちなみに、それぞれで想定される読者体験は以下の通りです。

  • ①片思い志向×障害有り:ありとあらゆる困難にめげずに頑張るヒロインに共感!
  • ②両思い志向×障害有り:実際付き合ってからも色々あるよね!でもこの2人なら乗り越えられるよ!
  • ③片思い志向×障害なし:あーあったわー…私にもこんな純粋な頃もあったわー…/(または逆ハーレム系として)私だったらどの男が良いかな!○○君萌え!
  • ④両思い志向×障害なし:もう2人がにこにこ幸せそうにしてるだけでこっちも幸せです…末永くお幸せになって…

だいぶ雑ですがこんな感じではないかと。

王道中の王道といえば①です。アオハライドとかがこれに当たります。ちょっと特殊だけどひるなかの流星もたぶんここ。次に多そうなのが②。スイッチガールとかラブ★コンとか。こちらの場合は主人公側だけでなく彼氏側の好感度も高める必要があるので、途中で当て馬がしゃしゃり出すぎることなく、付き合うまでは割とシンプルに突き進むような気がします。

1番珍しい(というか作るのが難しい)のはたぶん④。俺物語みたいな派手なキャラ立てか、ふつうの恋子ちゃんみたいに皆が覚えていないような些細なことを丁寧に拾う細やかさが必要になりそう。

 

そんな余談はさておき、それでは現在のマーガレット連載陣を2×2でプロットしてみましょう。

f:id:se_togiwa:20170712005606j:plain

(※尚、筆者は電子版購読者のため連載ラインナップを参照しているのはマーガレット14号です)

こうしてみるとバランスが良い!

と言いたいところですが、そもそもまだ連載中で先の読めない作品をプロットしているため独断要素が多々あります。そうなってくるとこの図の意味とは?という疑問が胸をかすめますが気にせず続けます。

とにもかくにもこのように連載陣を分けた場合に、次に考えるべきがケーキについてです。

 

ケーキの概要

上記のような状況にある時に、そもそもケーキとはどこに位置するどんな作品かについて見ていきましょう。

まずはあらすじを確認します。

芹沢天、高校1年生、女子。通学はバスで片道2時間。特に不満は、なし。だったけど…。友達の下宿先にこっそり泊まった日。そこに住む男の子の言葉に背中を押され、家を出て下宿をすることに。新しい出会いが呼び起こす、この気持ちはいったい何――?

(「ショートケーキケーキ」1巻あらすじより)

f:id:se_togiwa:20170712194504p:plain

 公式あらすじが薄い…!

もう少し説明を加えると、上画像の青髪の女の子がサバサバした性格の主人公・天、赤髪が天と同級生の読書好き・千秋、緑髪が別の高校に通うチャラ男・理久、金髪が下宿含む土地周辺の地主の坊ちゃん・鈴です。

 

*これより下は、ストーリーネタバレを含みますのでご注意ください。*

それでは先ほどの2×2の図に話を戻します。ケーキがどこに位置するかというと、おそらくですが「②片思い志向×障害なし」の逆ハーレムパターンに該当すると考えます。

まず、主人公の天は恋愛脳ではありません。友達から気になる異性の話を向けられても反応を示さず、肝が据わってるとまで呼ばれている、というキャラ付けです。恋愛感情を知らない→自覚するという流れが予想されますね。

その一方で男性陣はといえば、もうすごいスピードで天に惚れていく。理久は第2話時点で「ズッキューン来た」と言い始めますし、千秋も第10話で「天は俺のだから」と言い始めます。(鈴も天と過去に関わりがあった?ことが示唆されており、第1話扉にもいることからして主要キャラと位置付けられているものの、現状はただの邪魔者扱いです)

大筋のストーリーを見る限りでは、理久か?千秋か?天はどっちを選ぶんだろうハラハラ!とまあこんな感じなわけです。そこに障害はありません(=天がこっち!と選べば即両思い状態)。一応、寮内は男女間の部屋の出入り禁止なので、過去に寮内で付き合った人がおり女側が別の寮に移った、という寮内の男女交際禁止を示唆するルールは第2話時点で明かされております。が、それが登場人物が心を打ち明ける際のストッパーには全くなっていないので現時点で障害としては機能していません。

f:id:se_togiwa:20170712203517p:plain

f:id:se_togiwa:20170712203522p:plain

 

片思い志向×障害なし(逆ハーレム)の本来の勝ち筋

メイちゃんの執事が20巻+続編8巻までやってまだ理人か剣人か!?と引っ張り続けてるのを見ても、ふつう逆ハーレムから始まったら選んだ瞬間=物語の終了なんですよね。努力で相手を振り向かせるというイベントが発生しないので。

なので、延々と2人に見せ場を与えて読者を乙女ゲーさながらにドキドキさせながらも、どちらを選ぶかについてはなんやかんやと答えを先延ばしにし続ける…というのが勝ち筋だと考えられます。

男女逆のラブコメ作品の方が例が多く、思い浮かべやすいかもしれません。いちご100%とかToLOVEるとかニセコイとか。結局誰と付き合うのか?という答えは引き伸ばせるだけ引き伸ばし、その間にも次々と魅力的な脇役異性キャラが登場!しかし、本命候補は2人しかおらず、読者は自分の応援している側のキャラが最後に報われるよう願いながらハラハラを楽しむ!というアレです。

この際、主人公のキャラは薄くてもよく(好感度が高いに越したことはありませんが)、相手側の異性をあの手この手でいかに輝かせるかが重要となります。今でも東城派か西野派かで戦争が起こるのは必然の理なのです。

私は東西よりもさつき派です

 

現状のケーキの展開とその問題点

ケーキについても、本来そのような意図の舞台設定だったのでは…?という気がします。日常系のスローな空気の中、2人(or鈴も入れた3人)の見せ場があるも、卒業して寮を出るまでは誰も決定打を打たず保留になり続ける、とか。

ところが、最近の展開では千秋と理久それぞれが天に攻勢をかけるアピールタイムがあっという間に終息を迎え、恋心を自覚した天が理久に告白しています。もう選んじゃうんかい!もう5巻くらい引っ張らないんかい!

正直、理久と千秋が天を好きになっていく過程もそれほど深く描かれているわけではない(話数はそこそこあるが、話が進むテンポ自体が遅い)し、天に2人のどちらを選ぶかという葛藤があったわけでもないので、このままもし理久と付き合って即終了した場合、なんか気付いたら何事もなくするするっと2人がくっついたけど何だったんだ…?となりかねません。中学時代の間に真中が西野からアプローチされるものの取り合わず、東城とあっさり付き合って終了するようなもんです。(この例えがわかりやすいかは知りません)

 

但し、このまま理久と付き合った後の展開可能性がないわけではありません。

  1. 実は本命は千秋で理久はやっぱり当て馬でしたパターン
    天が先に会ったのは千秋(見開きでドラマチックな演出まである)、第1話表紙で横にいるのも千秋、ということで実は最終的には千秋とくっつくんですよ、というパターン。比較して理久はいかにも当て馬っぽい登場だったということもあり、可能性はありそうです。
    ただ、千秋の好感度は理久の株を上げるために展開上の犠牲になった(千秋は親友である理久が天のことを好きだと知っており、応援すると宣言したのにそれを何回も裏切る形で天にアピールする形になってしまった)ようなところがあり、ここから千秋に持っていくには大幅な好感度回復を要するのがネックです。
  2. 実は両思い志向でこの後も理久とのラブラブを描き続けるんですパターン
    これまでのアピールタイムで理久の好感度をぶち上げ続けたことから、読者の大多数は理久派になっただろうと決め打ち、両思いラブラブまったりライフを展開していくというパターン。
    とはいえ、まだ一定数いるだろう千秋派が離れていく懸念があるほか、皆同じ寮に住んでいるという設定上、2人の近くにいることに耐えられずに千秋が転寮といった暗い展開にもなりかねないなと思います。また、今更部屋の出入り禁止をクローズアップして障害っぽく描いて話を回すにも、アクシデントながら第1話で既に破ってるのでこっそり破ればいいじゃんと思ってしまいそう。
  3. 今後は恋愛以外の部分でドラマをぶん回していくんですパターン
    恋愛面は理久と収まり、それを基盤としながら理久と鈴の関係解決や、寮の廃寮危機に立ち向かう、町おこしを手伝う等、恋愛以外を主眼に置いて展開していくパターン。
    個人的に1番ありそうだなと思えるのはこちら。第1話扉や4巻表紙にまでいる鈴が現状ではあまりに端役すぎて読者にも忘れ去られている感が半端ないのですが、何かしらドラマを動かす設定を背負っているはずだ…という予想です。舞台・猫千谷についても割と印象的な風景コマが複数出ており、作者の思い入れがありそう?

f:id:se_togiwa:20170712221637p:plain

 これが本当に本命キャラの初登場シーンか…!?

 

終わりに

以上好き放題書いてきました。本作品は人気作品のはずなのに勝ち筋のストーリーから外れているのでは?という点、伝わりましたでしょうか。

逆に言えば勝ち筋ストーリーでなくても人気が獲得できている、ということなのでそれはそれで興味深いのですが(少女漫画でデビューを狙う際に絵や演出の勉強と話作りはそれぞれどのくらい重視すべきか、とか。または少女漫画において作者固定のファンがどれほど付きやすいかとか)、ここまでの私の解釈や理解が妥当かに自信があるわけではないのでそこまでは追いません。

いや、そもそも類型化にこの軸は適切でないのでは!?とか、こんな勝ち筋もあるじゃん!とか考えてる人がいたらぜひ意見を交わしたい。面白いので。

 

そしてショートケーキケーキの今後の展開を引き続き注視したいと思います。

ショートケーキケーキ 5 (マーガレットコミックス)

ショートケーキケーキ 5 (マーガレットコミックス)